7つ真珠の首飾り
どのくらい、経過していたのだろう。
目に見えて太陽の位置が変わってきていた。夏だから昇るのがはやいだけだ、などとよくわからないことを考えながら、わたしはめげずに白い手を握った。


両の手でひとつのものを握っていると、さすがに冷たかった手にも温かみがうつってきたような気がした。

もう一度、亜麻色の髪を掬いあげようかと思った時、唐突に、生き物は目を開いた。


生き物は思いきり咳き込んだ。苦しげに喉元を押さえる。わたしは思わず背に手を伸ばし、優しく撫でた。

やがてそれが落ち着くと、生き物は、背中に触れた未知なるわたしの手の感触に気づいたように、そして自分の手が何物かによって包まれていると気づいたように、わたしの方に顔を向けた。


――その、瞳の色のうつくしさは、言葉にできるようなものではなかった。


青色、と、一言では言い表せない。深い海の底から一直線に水を汲みあげて掻き混ぜたような、海の全てをうつしとったような色。
その瞳の中では陽光が交差して、あらゆる角度から光をあてた宝石のように、信じられないほど生き生きと輝いている。


知らず、わたしが見つめ続けていたそのうつくしい瞳が大きく開かれたと思うと、彼はわたしの存在を認識したらしく、瞬時に体を起こした。


「――っ」


しかし、彼にとっての異生物――すなわちわたしから離れることはかなわず、すぐにふらりと砂の上に倒れ込んだ。


「あ、あの……大丈夫……?」


言ってから言葉が通じないという可能性を思いついた。しかしそれを即座に打ち消すように、彼はわたしと同じ種類の言語を漏らした。


「あなたは……」


声すらも、弱々しさの中に芯のある響きで、非の打ちどころがないほど美しく、それでもなんとか自分のことを聞かれたのだと理解することはできた。
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