7つ真珠の首飾り
わたしは、と、震える声はそこで途切れる。

彼が聞こうとしていることは、たぶん。


「人間、です」


彼は何も言おうとせず、再び動こうともせず、観念したようにじっと砂の上に倒れていた。
わたしはどうしてよいかわからず、ひとりであたふたするのも馬鹿らしい気がしたので、彼と同じように身じろぎせずに座っていた。

その時は気づかなかったけれど、わたしたち2人は、なぜだかそんな状況で、お互いに固まって動き出そうとしなかったのだった。


やがて、痺れを切らしたように口を開いたのは彼の方だった。


「……手を」

「あっ……ごめんなさい」


固まっていた間もなかなかに力を込めて握り続けていた彼の手を、思わずぱっと離す。


「握っていて、くれたのか」


視線が合う。
宝石のような瞳の中に自分が映るのを感じてうつくしさに怯みそうになったが、微かにうなずいた。

その途端、彼が体の力を抜いたような気がして、わたしは顔を彼の方に少しだけ近づけた。


「あの、安心してください。わたしはあなたに、危害を加えるようなことは、絶対にしませんから」


それはわたしの精一杯だった。拙いけれど、精一杯。

彼はわたしの言葉か、それともわたしのがちがちに固まった表情にか、それとも手に残るぬくもりにか。
何かに、安心か、それに近いものを抱いてくれたようで、彼はうっすらと笑った。

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