7つ真珠の首飾り
わたしはいつもよりも随分と饒舌だった。

家や学校ではあまりに口数が多いと、品がないといって叱られてしまう。

ここではそんなことはない。


「なんで陸で倒れてたん?」

「昨日はすごい嵐だっただろう」


強風が窓枠を軋ませていた音を思い出す。


「風が強いと表面の海流も強くなる。僕らの暮らすような深海では影響はないけれど。
海上が酷く荒れているらしいと聞いて、気になってしまったんだ。

海面近くへ泳いで行って、相当な流れとうねりを感じながら海上に顔を出した。

予想以上に波が高くて、荒れ具合が酷かったから驚いたよ。
無人の小舟も何艘か浮いていて。転覆して沈んでいくものも見た。

あんまり風も雨も強かったから視界が悪かったんだ。
たぶん、船の残骸か何かだったんだと思う。板きれのようなものが飛んできたと思ったら、それで頭を打って……この通りだよ」


彼の口調があまりに軽くて、しかも笑いながらそんな話をするので、わたしは少し心配になるほどだった。
もしかしたら気絶ではすまなかったかもしれないのに。

気をつけないと、なんて言ったら、余計なおせっかいだと思われるだろうか。


「助かって、よかったねぇ」

「うん。危ないところだったよ。だけどシズに会えたから。陸に辿り着いてしまったけれど、シズに会えた嬉しさの方が大きいかな」


あまりに真っ直ぐな物言いに、わたしはどぎまぎしてしまう。こんな綺麗なひとに、そうでなくても、そんなことを言われたことは今までになかった。
恥ずかしいけれど嬉しいのに、なんと返事をしていいかわからない。
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