7つ真珠の首飾り
ティートの行動力がわたしを驚かせたことは、それからも何度かあった。

その中でも1番だったのが天井のことだ。


ある日わたしたちはいつも通り洞くつの中で喋っていた。


「シズはきれいな物が好きだね」

「そうやなぁ。でも女の子なんてみんな、そういうものやと思うのやけど」

「確かに、僕の妹や姉は、きれいな色の貝殻を見るととても喜ぶみたいだよ」

「わたしも貝は好きやわ。色もきれいで、殻の光沢も1つずつ違って。天然ものやからこそ個性があって、きれいやねんなあって」

「深いところには、きっとシズは知っているよりもっとたくさんきれいな貝がいるよ」

「本当? 見てみたいなぁ」


わたしは何の気なしに言ったのだった。要求したつもりはなかったし、ティートの方でもそう思っての行動ではなかったと思う。


次の日、洞くつを訪れたわたしは驚いた。中には、きれいな貝殻がうずたかくつまれていて、天井の付近を白い海鳥たちが飛び回っていたのだ。


「こっ、これは……?」

「きれいだろ? これで天井を飾ってもらおうと思って」


例の穴から半身だけを出したティートは小さく口笛をふいた。近くにいた海鳥が、彼の差し出した腕にとまる。


「話を、できるの……!?」

「ある程度はね」


そう言って彼はまたわたしを驚かせた。


それからティートは、きれいな貝殻を見つけては洞くつに持ってあがってきた。
鳥たちは忙しく飛び回り、ものの5日ほどで洞くつの天井はうつくしい貝たちで埋め尽くされることになった。

そのうつくしさは本当に見事なものだった。
貝は上品な光沢を持った形のきれいなものばかりで、様々な大きさと色があった。

天井が手元の蝋燭から放たれるおぼろげな光を跳ね返すと、洞くつ中がうつくしく光り輝くかのようで、わたしはいつまででもそのうつくしさを眺め続けることができたものだった。


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