7つ真珠の首飾り
そうやって洞くつはわたしたちにとってどこよりも居心地の良い場所となった。


わたしはこの島を愛しているし、家も、家族も大好きだ。

暮らしにもそう不満はない。きちんと教育を受けさせてもらえている分、もしかすると他の同年代の子よりも恵まれているとすら言えるかもしれない。


そんな中でも、彼の、ティートの魅力は強烈なものでありすぎた。

穏やかで大きな起伏もない、よく言えば平和、悪く言えばありきたりな毎日。

平凡な日々に突如飛び込んできたのが、あれほど鮮やかなうつくしさを持った、未知の生き物だったのだ。

彼の存在はわたしにとって刺激的すぎた。
分別心をなくしてしまいそうになったこともある。


それを辛うじて引き止めていたのは、日々の関わりの中で、そうはいってもやはり感じずにはいられない、隔たりの部分だった。




「どれぐらい喋っていただろう。シズ、そろそろ帰らなくても大丈夫?」


その夕暮れ時、わたしたちは洞くつの前の砂浜に座ってお喋りをしていた。


「出てきたんが酉の上刻やから……そうやね、そろそろ帰らんとあかんわ」

「トリの……何?」


彼は首を傾げた。


「酉の上刻。この島で伝統的に残っている、時の数え方のことや。海の中では、時間の感覚は、ないん?」

「太陽の高度を見て、大体で。でも季節のことも考えなくちゃいけないから、かなり不便なんだ」


彼は「トリのジョウコク」に対し興味を持ったようで、その制度を教えて欲しいと言った。

わたしは砂の上にふたつの円を書き、それぞれを6つに分けて説明をする。


「そもそも年の数え方に、十二支ちゅうもんがあって……」

「陸の生き物だね。知らないものばかりだ。ああ、リュウは聞いたことがあるよ」


彼は必死に指折り数え、ほとんど暗号のように、ネ、ウシ、トラ、ウ……と、何度も何度も唱えていた。
< 23 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop