7つ真珠の首飾り
ハンカチを敷いて座り込み、筆箱を開こうと思った時だった。


「あっ、ティート!」


洞くつの内部の、例の穴ぼこからざぶりとティートが顔を出した。


「シズ。来ていたんだね」

「うん」


わたしは傍に寄って、穴から出るのを手伝った。


「はあ……いつも思うけれど、浮力のない世界では体力を使うね。シズは強いなあ」

「それ、あんまり嬉しくないわ」


2人で笑い合う。
ティートは洞くつの床に座って、亜麻色の髪から滴る塩水を絞っていた。

わたしはそれをじっと眺める。蝋燭の灯りに照らされた彼は、それはそれでとてもうつくしい。髪も、肌も、瞳の色も。


「あれ、ティート」


そうしてふと気がついた。なんだい、というようにティートが首を傾げる。


「疲れてる? あんまり顔色が、良くないみたいやけど」

「そうかな?」


ティートは笑顔を作ったけれど、それさえも無理をしているように見えてしまった。

最近の彼はこういうことが多かった。
あまり会えないことと関連しているのだろうな、とうっすら思ってはいたけれど、海の中――わたしの見えないところ――で何をしているの、なんて聞くと労りの意味以外までもを含んでしまいそうで、尋ねることはできなかった。
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