月の恋
「…………」
『…………』
しばらくの間、鬼壟と生綉姫は無言で見つめ合っていたがその沈黙を破ったのは鬼壟のため息だった。
「……昨日の俺の言葉覚えてるな?」
『まぁ…一応』
「じゃ…俺の女は?」
『………誰?』
きょとんと首を傾げた生綉姫の腕を掴んで鬼壟は自身の方に引っ張る。
『っ!』
ななななっ!近い!!
急に至近距離まで近づいた鬼壟の顔に生綉姫は慌てだす。
鬼壟はしばらく目の前で困惑の色を浮かべてる丸い瞳を見つめていたのだが
「…マジかよ」
その呟きと共に生綉姫の腕から自身の手を離した。
『………』
こいついけるか?
何かブツブツ言ってるけど…
頭を項垂(うなだ)れ鬼壟は「何でだ」とか「どうやったら」とかブツブツ繰り返していた。
そしてしばらくすると項垂(うなだ)れていた頭を急に上げこちらを見てる生綉姫を瞳に映した瞬間…
「飯だ!早く来い!行くぞ」
それだれ言うと早足で鬼壟は部屋から出て行った。
その光景を見ていた生綉姫はぽかーんと口を開け
『意味分からん!つーかはやっ!てか待ってや!』
と叫びながら鬼壟の背中を追い掛けた。