月の恋
部屋を出てから鬼壟の後ろを付いて歩いていた生綉姫だったがふとここに来てからずっと疑問に思っている事を聞いてみたくなり表情の見えない背中に問い掛けてみる。
『なぁ~…何でここ洋風と和風がまぜまぜなん?』
廊下には一定の距離を開けながら部屋の扉がある。
だかその扉は時にヨーロッパ風の貴族の屋敷にありそうな扉やはたまた日本屋敷にある様な障子だったりする。
それは扉だけにとどまらず廊下もジュータンが敷かれてると思えばヒノキの香る木の床へと変わり、廊下で鬼壟を見て深々と頭を下げる人達もまた着物であったりメイド服や執事の様な格好をしていて…
こんなにも美しい建物なのに何処か纏(まと)まりが無く生綉姫は疑問を抱くと同時に何処かモヤモヤするスッキリしない気持ちを鬼壟に伝えた。
『こ~なんつーの?もっと右は和!左は洋!って感じで分けたらスッキリしやん?』
生綉姫の言葉に鬼壟は小さく笑みを浮かべる。
「どちらか1つにしろとは言わないんだな」
『うちは洋も和もどっちも好きやから』
「…そうか………ついたぞ」