月の恋
鬼壟の言葉に目線を上げればそこには2枚の扉が主を迎え入れるためその口をゆっくりと開き始める。
『………』
でかっ!
何やこの扉!!
どんだけデカイ人間が通るねん!!
「ここに人間はいねーよ」
生綉姫の思っていることが分かった鬼壟は呆れ気味に呟く。
だがそんな鬼壟の声はキョロキョロしている生綉姫には届いておらずそのまま鬼壟の後を追い掛けて扉の中へと入って行く。
『うわぁ~すっごー!!』
そう歓声を上げる生綉姫の目に飛び込んできたものは美しく大きなホールだった。
天井からは巨大なシャンデリアが太陽の光を浴びキラキラと輝き、開け放された窓からは優しい花の香りを乗せた風がカーテンを揺らしながらホールを通り抜けて行く。
あまりの美しさに魅入っていた生綉姫はホールの中央からかけられた声に現実へと戻された。
「みっち~」
『っ!だから!その呼び名やめて!!』
「え~可愛いのに~」
ニコニコと爽やかな笑みでこっちを見ている水元にガクッと肩を落とす生綉姫。
そんな生綉姫の横から低い声が聞こえた。
「……みっちー?」