月の恋
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鬼壟は生綉姫の顔にかかった髪をどかすと膝の裏と背中に腕を通しゆっくりと持ち上げた
「…戻るぞ」
いつの間にか後ろにいた部下達に声を発する
「「「はっ」」」
闇をまといし数人の影は風と共に姿を消した。
その姿を木の陰から見ている者がいるなど誰一人として気づかなかった…
ーーみつけた…我が姫よ
月だけが…
これから起こる出来事を知っている
今はまだ静かに眠る一人の少女が消えないように優しくその光で包みこむ