月の恋
風と共に、導こう…
ーーチュンチュン
『…ん』
生綉姫はゆっくりと目をあけた
知らない天井
昨日目が覚めた部屋でもない
また、違う場所におんのか…
自分を包むふかふかの布団ですら今の生綉姫にとっては辛いものでしかなかった
“自分の家じゃない”
手で目を覆い深いため息を吐く
ガバッ
『いつまでもウジウジしてたってしゃーない!本腰いれや生綉姫!!』
負の気持ちを払いのけ急に勢いよくベットの上に立ち『おぉーー!!』など女らしからぬ声で叫ぶ
ーーーガチャ
ん?
後ろを振り返れば扉にもたれながらこっちを見ている鬼一名
アイツ確か昨日の鬼やんな?
「目が覚めたか?」
ここはコイツん家か?うちなんか家入れて何するつもりや?
あっ!
もしかして昨日喧嘩ふったこと根にもっとんのか?小さい男やの~しゃないその喧嘩買うたる!
勝手にバトルモードに入った生綉姫は両手とも拳にし構え始めた
ーーークス
「…猫だな。懐かなければ牙をむくか」
何やコイツ頭のネジ1本飛んだか?どこに猫がおんねん?
まさか自分が猫だと言われてるなど思いもしていない生綉姫はキョロキョロ辺りを見る
そんな生綉姫を愉快そおに眺めた鬼壟は口を開く
「お前、名はあるのか?」
急な問い掛けに一瞬ハテナ顔になったもののすぐに答えを返す
『ある』
「…名は?」
『知りたかったら自分から名乗れ。それが礼儀やろ』
「………」
『………』
しばらく睨み合ったあと鬼壟がゆっくり沈黙を破る
「鬼壟(きりゅう)だ」
『うちは…天上 生綉姫(てんじょう みつき)や』