月の恋


「鬼壟様」


「…去れ、風雅(ふうが)」

急に背後から話かけられても鬼壟は風雅が現れることを分かっていたかのように言葉を発する。


「今は、機嫌が悪い」



「…しかし」

風雅は言葉に詰まる


主の機嫌をそこねればこの屋敷の者が何人死ぬか…何より、このことを我が主が知れば





目を閉じて考えていた風雅はゆっくり目を開けた覚悟を決めたように口を開いた。




「月鬼族(げっかぞく)の者が姫を帰せと参られています」

「っ!!」














我が主よ…乱されてはいけない“王”たる力を持った貴方様が揺らいではいけない

例えあの方のーー


風雅の言葉を聞いた瞬間、鬼壟は顔色を変え風のように目の前から消えた


自分の主が行った先を睨みながら風雅もまた後を追うように消えた


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