月の恋
…バンッ!!
扉が開けられたかと思えばすでにそこにはボロボロの扉と鬼族の長が立っている
鬼壟の気迫に中にいた者は皆その場に固まり動けないでいた…一人を除いて
「…珍しい客人が来るもんだな」
その声はあまりにも低く威圧感をふくんでいた。
鬼壟は部屋のソファーに優雅に座りこちらを見てる男を睨みつける。
「……半分人間の血を持ちながら妖怪たちすら従える力をもち…唯一聖なる“姫”に仕え愛された者…めったに現れないそんな奴がなぜこの屋敷に来るんだろうな……なぁ…………蒔騎」
ーークス
蒔騎は椅子からゆっくり立ち上がり鬼壟の元え歩みよる
その綺麗な唇を動かし言の葉を発する。
「ここに我が姫がいるからだ」
「!!」
「姫は何処にいる?」
「…どうして…あんたが」
「何度も言わせるな…姫が「月鬼族は滅んだはずだ!!あの時!お前も!」」
鬼壟の目がかすかに揺れるのが蒔騎には分かった
自身の口元が上がるのが嫌でも分かる
現実を受け入れることができなくて何かを求めるように必死に自分を映しているその瞳が昔のままでつい嬉しくなる
「…滅びた分けではない。ただ時が来るのを待っていた…長が戻れば我等、月鬼族は甦る。さぁ…姫は何処だ?」
「………」
鬼壟は動けないでいた
今も目を閉じればそこには笑ってる君がいる誰よりも何よりも守りたかった……
守れなかったあの人の娘ーー