月の恋
いや~ほんまびっくりした~
やっと震え止まったし…
……やけど
あの姉ちゃん大丈夫なんか?
生綉姫は深呼吸をついたあと自分がいつまでも同じ場所に立っていたことを知る。
『…部屋にでも帰るか』
行き先を決め振り返ろうとした瞬間……
「お待ち下さい」
『…っ!』
その声はまたもや生綉姫を動けなくさせた
生綉姫は声がした方をゆっくりと見る。
居ないことを願いながら……
ーーだが
『………』
オーマイガーー
生綉姫は目の前の暁岾を見て、自分の不運に嫌気さえ出る
そんな生綉姫に暁岾は歩みより生綉姫にゆっくりと頭を下げ言葉を放つ。
「さきほどは、下の者が大変ご迷惑をおかけしたこと、まことに申し訳ございませんでした」
『…え?い、いえ!とんでもないです。こっちこそ何かごめんなさい』
まさか頭を下げられるなど想いもしなかった生綉姫は自分もつられて頭を下げる。
「お心づかい痛みいります。…申し遅れましたが、私は鬼族黒壟取締役“長”(きぞくこくろうとりしまりやく“おさ”)、暁岾(あきやま)にございます」
『……あっ!う、うちは天上 生綉姫(てんじょう みつき)です。よろしくお願いします』