月の恋
ーーーーー…
「それでは生綉姫様この階のお掃除をお願いします」
『はい!まかせて下さい!…あとやっぱ“様”付けは絶対なんですか?うちはいらんねんけど…』
「駄目です。下の名で呼ぶのも恐れおおいのに…生綉姫様がどうしてもって言うから……。絶対に“様”だけは譲りません!」
はぁぁ…
以外に頑固なんやな…
目の前でそっぽを向く暁岾に生綉姫は苦笑いでついて行く
「この階が終わりましたら第2邸の中庭に行ってください。そこに霧戸(きりと)と言う庭師がいます、その方の手伝いをお願いします」
『分かりました!』
「何かありましたらすぐに呼んで下さい」
最後まで不安な顔をする暁岾に生綉姫は『大丈夫です!』と笑い手を振る
小さく頭を下げ暁岾はその場を去っていく。
ん~~…大丈夫とは言ったものの
『広すぎやしません?』
今生綉姫の前には真っ直ぐのびた廊下
ーーと、
廊下にいくつかある扉を開ければまたまただだっ広い部屋
この階言うてたからやっぱ全部やんな?
………………。
ーーキュゥ
カーディガンを腰に巻きブラウスを腕まくりし腕についてたゴムで髪を束ねポニーテールにする。
気合いを入れるために頬を2回叩き…
『よっしゃーー!いっちょやったりますか!』
これでもかって言うぐらいの大声に鳥達は驚き空に飛び立つ。
だが、当の本人は気合い十分。
この後、生綉姫はまた叫ぶことになるなど今は知らず鼻歌を歌いながら掃除を始めた。