月の恋
キーンコーンカーンコーン
「ばいば~い」
「またね~」
生徒達が次々と帰って行く中廊下にはある教室から流れてくる声が響いていた。
『やっぱうちも帰るー!それか待っててや~帰り寂しいやん』
「馬鹿言うな!てか離せ!」
『嫌や~どうせはよ帰るんドラマ見るためやろ!うちとドラマどっちが大事やねん!』
「ドラマ」
こいつありえん!薄情や!
はっきりと告げる美羽を生綉姫は恨めしそうに見つめる。
そんな生綉姫に呆れ気味の声が届いた。
「天上…おまえってほんと馬鹿だよな」
そんな声と共に現れた生綉姫の担任である小林は近くの机に腰を下ろす。
『なんやねんコバヤン、お前は呼んどらんわ』
「…ふ~ん。それが助けてやった人への態度か」
『あぁ?』
眉間に皺を寄せた生綉姫に「お前はヤンキーか…」とため息をついた小林は数枚の作文用紙を生綉姫の机の上に置く。
「まぁええ…反省文で許してくれるやってさ」
え…?
『ほんまに!マジで!』
告げられた言葉に目を輝かせながら立ち上がった生綉姫は嬉しさのあまりにガッツポーズをする。
「あぁ」
口元に笑みを浮かべる担任の小林とやったーと叫んでる生綉姫を見ていた美羽は自身の鞄を肩にかけ、2人に「またね」と声をかけて家路へと足を動かした。