月の恋
ーーーッドサ
『んーーー、気持ちーー!』
こんな風に芝生に寝転んだんって何年ぶりやろめっちゃ気持ちええわ~
ーーーササァ…
風が優しく花の香りを乗せ生綉姫の前髪を揺らしていく
『………。』
不思議やな。
空も草も花も水もみんな何も変わらんのにうちがおった世界じゃ無いねんもんな。
鬼だの妖怪だの今だに意味分からんけど
まぁ…たった2日で慣れてる自分も意味分からんけど、
うちってけっこう神経図太いんか…?。
あまりにも変わりゆく変化にちゃんとついて行けてる自分に生綉姫は小さく自嘲する。
『……そう言えばあん時もこんな空やったっけ……』
青い空をゆっくりと流れる雲
歌を奏でる鳥の囀り(さえずり)
風が運ぶ草木の香りと少し甘い花の香り
その全てが生綉姫を淡い記憶へと導く……