月の恋


…………。


『…なんやねんこの手わ』

生綉姫は自身の右頬に違和感を感じ眉間に皺を寄せた。

だがその表情さえ楽しいとばかりに小林は目を細める


「さぁ~何でしょ?」



ダァーッキッショイ!

ーーーベシッ


「いって~」

『誰が勝手に頬っぺ触って良いなんて言うた!キショイんじゃ!』

痺れを切らした生綉姫は小林の手を叩いて振り落とす。


「いや~ちょっと男を教えたろかな~て思って」

ーーーニヤリ



サァーー…
うぁ~鳥肌立っとるやんけ

『それ以上近づいたらぶっ飛ばすで』

「……はいはい、わぁーたよ」

降参みたいに手を上げた小林を怪訝な表情で見上げていた生綉姫の耳に機会音が届いた。




ーーッピリリリ!

「おっ!由里(ゆり)からメールやん」

小林が呟いた言葉に生綉姫の思考がそちらへと向く。


『…姉ちゃん?』

“由里”とはうちの姉ちゃん、由里ねぇとコバヤンはいわばカップルってやつ。

うちがまだ中学の時にコバヤンが現れて、いつからやろ?気づいたらもう付き合ってたな…

だがアレがコレになんねんもんな…
今でもビックリや


生綉姫は目の前で嬉しそうに携帯に夢中な小林を見てゆっくりと過去を思い出す。


由理ねぇとコバヤンが付き合ってもう3年になると思うけどほんまにコバヤンのアタックは凄かった

転校が多いうちら家族にコバヤンはどこ行ってもついて来て「俺の女なれー」って馬鹿みたいに叫んどった



あん時やってーーー



うちらは電車乗って引っ越し先に移動中やのに、外で誰か叫んでる思たらコバヤン田んぼ道自転車でおっかけて「引っ越し先どこやねん!俺わ絶対諦めんからなー!」って変態発言

ほんまありえんわ…


生綉姫は思い出しながら口元に笑みを浮かべる。


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