月の恋


『………』

生綉姫は自分の口元が何度もヒクつくのが嫌でも分かる。



今だ入って来た障子の前で呆然と立っている生綉姫に気づいたある者が大声を出した。


「人間の女が居やがる!!」


その声に今まで騒いでいた他の妖怪達も一斉に生綉姫を見た。




生綉姫は一斉に見られて困惑するものの今だこの状況が整理できていない。


『………』

「お?何だビビっちまったか女~」

ぎゃははは~と下品な笑いをするのはさっき生綉姫に向かって大声を出したやつだ。
そいつはそのまま障子の前で立ってる生綉姫の元へ行き体を屈め生綉姫の顔を覗きこんだ。


「おい…女、てめぇ…こんなとこで何してんだ?」

その声はさっきの下品な笑いとは違い鋭さを含んでいた。



「…聞いてんのか?…あぁ?」



「雷寺(らいじ)やめとけ。その女ビビって何も言えねぇんだろ」



生綉姫にまたも鋭い睨みをする雷寺に停止の声がかかった。


「水元(すいげん)邪魔すんなよ」


さっきまでとはまた違う声を出した雷寺はまたぎゃはははと笑い出した。




ーーーーだがその刹那










『ぶっばああああー!』




生綉姫の声が部屋に響いた。



『ダァーッ!もお無理!息止めとくんめっちゃしんどい!あーありえん!!』


急に声を出した生綉姫に部屋の中に居た妖怪達は目を見開いた。



「おい、女…てめぇ『ダァーッ!!近寄んな!くっさいねん!!』」



「は?………あ゛ぁ!!」



生綉姫の言葉に雷寺のこめかみがピクピクしだす。


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