月の恋
「………」
「はぁ…はぁ……っ」
静まり返った部屋の中には私の乱れた呼吸だけが響いてる。
「…………っ!」
なんてこと…鬼壟様に逆らうなど!
あってはならない!…………だけど!
私はっ!!
自分の感情と仕える者としての感情が咲羅を追い詰める。
どうしたら良いのか分からずいつの間にか膝の上で拳を作っていた手にさらに強く力を入れる。
だが……悩み迷ってる咲羅に鬼壟は容赦なく言葉の槍を投げつけた。
「俺の言うことが聞けないなら………」
“どんなに小さくてもその声は私の耳に届く”
「天鬼低を去れ」
薄暗い部屋の中、彼の紅く魅惑的な瞳が私を見下ろす。
何度も振り返ってその瞳に私を映してほしいと願っていたのに……。
私は彼の瞳が…怖くて、怖くて、たまらなかった。
「……………」
目の前が真っ暗になる。
手が…体が震えて止まらない。
彼の力で震えてる訳じゃない。
彼の言葉が私の心を壊していく
何年もお側でお仕えし続けてきた
「め、命令を…聞かない者は不要で…すか」
そしてこれからも私は……
「わた…しはもう…要らな「命令を聞け咲羅」」
悲しくて、悲しくて…私は震える口で…
「…御意」
ーーーーー答えていた。
ーーーーーーーーー……