涙雨【短編】
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梅雨に入った。
6月下旬のことだった。
放課後の校舎はとても静かで、私の足音が遠く響く。
雨の音はとても寂しく。
まるで私の代わりに泣いてくれているかのように。
私はついさっき、
半年付き合った彼氏と別れた。
詳しくは、振られた。
他に好きな人ができたらしい。
出来るならば死ぬまで一緒にいかった。
本当に大好きな人だった。
悲しいはずなのに涙は全く出てこない。
この雨はきっと私のために降っていてくれているんだ。
―涙雨、だね。
その時、誰かのすすり泣く声が聞こえた。
完全下校はもうとっくに過ぎている。
―誰?