もう一度、名前を呼んで。【完結】
そのままあたしは一時間ほど散歩を続けた。
住宅街を奥まで進み続けると、小さな丘があった。
春の小さな花がいっぱい咲いて、それはそれは綺麗な丘だった。
人が訪れるような雰囲気はない。
こんなところがあるんだ……。
あたしは、誰も知らない秘密の場所を見つけたような気分になった。
ブーッブーッ
そのとき、この場に相応しくないケータイのバイブの音が聞こえた。
「……はい。」
(藍那??何処にいるの!?)
電話は、ママからだった。
「少し散歩をしてたの。今から帰るわ。」
(今からね。わかったわ。この辺にいるんならいいのよ。あっ!そうだ。今日は何が食べたい?藍那のために風斗がご飯作ってくれるって!)
そこはママじゃないのか…。笑
「なんでもいいよ。」
(そう?じゃあ言っとくから!)
そう言って、電話は切れた。