もう一度、名前を呼んで。【完結】
はぁ、と浅いため息をつくと前の昂太が再び振り返った。
「なんかあったんか?ため息はついてるし、顔色も悪いんちゃう?」
眉をひそめながら昂太が聞いてきた。
「へーきだよ。」
そう答えてはいたものの、藍那は実際ここ三日、夜は全く寝ていなかった。
食事も喉を通らず、ちゃんと食べることもなかった。
寝るのは行き帰りの車の中だけ。
食事をとるのも鳳狼と一緒にいるときだけ。
それすらも普通の人に比べれば少なかった。
「寝たほうがええで?
眠そうやんか。」
「うん…」
昂太があたしの心配をしてくれるのは分かるんだけどな……
そう思いながら、笑顔を貼付けて「大丈夫」と言った。