もう一度、名前を呼んで。【完結】
あたしがじっと男を見ていると、
「もうあんたを攫ってから三時間だ」
と言った。
三時間…
けっこう経ってるじゃん。
「えーっと、あんたの名前は…
藍那、だっけ?」
「何で知ってんの?」
初対面のこの男が、何であたしの名前を知ってるんだろう?
「お前のクラスにも紫蛇の奴はいるんだよ。」
口角を上げながら、フッと笑って言われた。
なるほどね……
あたしを調べた訳じゃないんだ。
あたしはそう分かって、少しだけほっとした。