もう一度、名前を呼んで。【完結】
ああ…
びしょびしょになっちゃった。
でも歩いても走っても一緒か。
大雨が降っているにもかかわらず、あたしはゆっくりと歩き続けた。
パシャッ
パシャッ
自分が歩く音。
ザー
雨が降る音。
この、高級住宅街と呼ぶに相応しい場所に、二つの音だけが鳴り響いている。
雨は好きだ。
なにもかも洗い流してくれる気がする。
喜怒哀楽の感情をすべて取り去ってしまうような、この頭の先から流れ落ちる雨が好き。
あたしのすべてを洗い流してほしい。