もう一度、名前を呼んで。【完結】
今日何度目かわからない感傷に浸っていると、すぐ近くで
バシャッ
バシャッ
と、人が走る音がした。
こんな大雨の中走るような人がいるの?
あたしは、自分のことを棚に上げて変な人がいるんだな、と思っていた。
すると、
「藍那!」
誰かが、あたしの名前を大きな声で呼んだ。
は……?
あたし?
恐る恐る振り返ってみると……
「はぁっはぁっはぁっ……」
さっき、あたしの腕を掴んだ、あの、男が立っていた。
「え…?何ですか……?」
どうみてもあたしとそんなに歳は変わらない。
なのにあたしの事を呼び捨てにする。
そんな仲の良い人、日本にはいない。
…と思う。
だけど、その男の人は何の迷いもなくあたしに近づいてくる。
やっぱり知り合いなのかな?