-Judge-
優しさに魅せられて
絹のような金の長い髪を靡かせて歩く彼女を、皆が羨望の眼差しで見る。
真っ白な肌。二重瞼の大きな目。色素の薄い瞳。
綺麗に通った鼻筋と、紅く柔らかそうな唇。すらっとした顎のラインから続く細く長い首は、とても魅惑的だった。
寒さで少し朱く染まった頬が、彼女がまだ11歳であるという事を遠慮気味に主張していたが。しかし、ピタッとしたスーツとヒールが彼女を大人びて見せるのは確かだった。
そのスーツの胸元には、金糸で『Rei』と小さく刺繍されていた。
「おい、レイ。」
その声に一度反応してしまいそうになったが、さも聞こえていないかの様にやり過ごす。
不快なものは無視する。それに限る。
「無視してんじゃねーぞ。」
突然視界に入ってきた腕に、しつこい奴だと内心毒づくけれど、後々面倒なことになるのは嫌で仕方なく足を止める。
壁に腕をついて行く手を阻む赤い髪の持ち主は、今日も相変わらず目つきが悪い。
「なあ、今日は何の訓練。」
そう問われて、舌打ちをしたい衝動に駆られる。
五年前に私の首を絞めて、敬語を使え。と忠告してきた奴が、今では会う度に声を掛けてくるナンパ野郎になっていた。