-Judge-
「稽古とハッキング。」
今日の予定を思い出すフリをしながらも、あまり休憩時間が長くないものをあげといた。
そうしとけば、いつもだったら「なんだよー。せっかくデートに誘おうと思ったのによ。」なんて言いながらふて腐れて終わる…はずだったが、今日は違った。
「今日は花山(カザン)休みだぞ。」
その科白に本気で嫌気がさす。
花山とは稽古担当の白髪のおじさんだったが、まさか休みとは。
因みに、暗殺を順調に遂行させるためにはターゲットを如何に騙すかが大きなポイントである。
つまりこの稽古は、この世界には欠かせないもの。
さて、この男がどうやったら引いてくれるか。その為にはオブラートに、尚且つ遠回しに断る必要がある。
「な、庭行こうぜ。」
「や、無理。」
「…」
言った後に激しく後悔をする。全くもってオブラートに断れていない。寧ろ激しく拒否してしまった。
「ほんと可愛い声できっつい断り方してくるよな、レイちゃん。」
額に青筋を浮かべる男の口元は笑っているが、目がちっとも笑っていない。