-Judge-
「ごめんなさい。本当に嫌な場合はどうすれば良いですか。」
「…明らか喧嘩売ってるよな?」
顎を掴まれて上を向かされる。
本当にいい加減にして欲しい。
近付いてくる男の顔に嫌悪感を抱く。
後少しで唇が触れ合いそうになり、我慢出来なくなって足を振り上げたのと、隣りから「キラ。」という声が聞こえてきたのはほぼ同時だった。
「あ?」
不機嫌そうな声を出して私から離れる男の腕を振り払う。
キラとは、この赤髪男のコードネームである。
「ゼン、邪魔すんな。」
キラが睨むその視線の先には笑みを見せる優男が立っていた。
「邪魔すんなってさ、明らかその子嫌がってんじゃん。」
眼鏡の中の優しい瞳がこっちを見て、同意を求めるようにひとつ、ゆっくりと瞬きをした。
声だけじゃなく、彼を包む雰囲気そのものが穏やかで、こっちまで怒っていたのが馬鹿らしくなる。
「え、はい。何度も言いますが、とても嫌です。」
優男の少し垂れた瞳に魅入りながら、ゆっくりとそう答えていた。
すると彼は、くしゃりとした笑みを見せて、「だってさ。ドンマイ。」
そう言ってキラの肩を叩く。