-Judge-
舌打ちをして去っていくキラの背中を見送ってから、優男はこちらに視線を向けた。
「俺の名前はゼン。君はレイだろ?」
「はい。」
「本当に、人形みたいなんだね。」
その言葉に私は内心驚いた。こんな風に直接言われた事なんてない。
「そうですか?」
「うん。ちょっとさ、笑ってみてよ。」
「じゃあ笑い方を教えて下さい。」
「うわ。そうきたか。」
俺ってギャグセンないんだよねー。
そう言いながら屈託なく笑う彼に、笑わせて欲しいと言ったわけではないのにと思う。
でも、その人当たりの良さに興味を持ったのは確かだった。
この組織にきて五年。
物事を直接言われたこともなければ、満面の笑みを見せられたこともない。
いつも裏で噂されるのを聞くだけで、向けられるのは偽りの笑顔。
「あなた、変な人ね。」
率直な感想だった。
「そうかな。君も十分変だよ。」
何故だかその科白に不快になることはなかった。