-Judge-
「ゼンを連れて行け。」
ボスに呼ばれて、ただ一言そう告げられた。内心驚いたけれど何も聞かずに、はい。と答えた。
ゼンと任務をするなんて初めてで、少し気が重かった。
それでもボスの言う事は絶対で、素直に従った。
ただ有り難いという気持ちもあった。ナンバーをペアで連れて行けるなんて、心強いのは確かだった。
復讐は、建物を爆破させる事から始まった。
ある一部屋に投げ込んだ小さな爆弾は、けれど、その階を全て吹き飛ばすには充分な威力だった。
中から聞こえてくる悲鳴に、心臓がどくんと脈打つ。
それは、とても小さな組織だった。Judgeと同じく万屋で、しかしあまり有名ではない。誰がこの組織に両親を殺すように依頼したのか分かれば、完璧に仕返しは終わる。この組織も、その依頼人も消す。そうすれば思い残すことはもう何もない。
「派手だね。」
轟々と燃える建物を見上げながらゼンがぽつりと呟く。
「こういう不可抗力は嫌い?」
その横顔にそう問えば、首を横に振って彼は笑った。
「世の中、不可抗力だらけだからね。」
一瞬だけ、いつもは優しいその瞳に狂気を垣間見た気がした。