-Judge-
「帰りますよ。」
刀夜さんの言葉に我に返って立ち上がると、小さなミツがこっちを見て首を傾げた。
「またきてくれる?」
そのきらきらとした瞳に、 思わず目を逸らした。
「うん、くるよ。」
思わず黙り込んでしまった私の変わりに、刀夜さんが答える。
ミツは不思議そうに目をしばたたせていたけれど、「待ってるね、レイ。」そう言って、手を振って行ってしまった。
「どうしたのですか、レイ。」
分かっているくせに、そう尋ねてくる刀夜さんに苛立つ。
「…別に。」
ぶっきらぼうにそう答えて、それでも内心は穏やかではなかった。
何も知らない無垢な瞳。
汚れの知らない澄んだ笑顔。
それは、この世界で生きてきた私にはとてもじゃないけど眩し過ぎて、一緒にいたら純粋なミツが汚れてしまう気がして。
素直に笑い掛けられない自分がいた。