-Judge-
桜の道標
桜ヶ丘学園。
そこは、全寮制の男子校である。ひとつの山をまるごと使った敷地内に建てられていて、とてつもなく大きい。
まるで東世の城のような立ち居振る舞いに、通っている生徒達も必然的にそれなりの金持ちの家で育った子供達ばかりということになる。
暖かな春の風に乗って満開の桜の花びらがひらひらと舞う長い道程を、一人の少年が大きな荷物を抱えて歩いていた。
少し長めのショートヘアの金髪は、春の陽射しを浴びてきらきらと光っていた。
長い睫毛の下から覗く瞳はとても綺麗な茶色だった。
誰が見ても美しいその顔立ちは女にしか見えないが、しかし、身に纏っているものは男子生徒が着る学ラン。
仕種は女性のように繊細ではあるが、男らしさも感じられる。
要は、どこからどう見ても美男子である。
まるで何を考えているのか分からない無表情な彼は、頭に乗っかる桜の花びらをその細い指で摘んだ。
「めんどくさ。」
その声は紛れも無く女性のもので、その後ろ姿もあまりにも華奢だった。