-Judge-

ドアノブを回すと、鍵も開けていないのに扉が開いた。

そこで、そういえばと思い出す。

昨日から転入生がきて、しかも相部屋になったのだった。
入学前の春からずっと一人部屋だったために、とても不思議な気分だ。

玄関にある自分の物じゃないローファー。きちんと揃えて置いてあるそれは、なんだか小さく思えた。

そこに残る微かな香りは優しいアロマ。嫌いじゃない、寧ろ好感を抱くその匂いに、女みたいだな。呟く。

電気がついていない部屋に不思議に思うと、案の定ソファーに寝ている奴を見つけた。


制服のまま横たわるそいつに近寄ると、ぴくりとその身体が揺れた。起きたかと思ったけれど、違う。


まるで人形の様なそいつの顔を覗き込む。
男に使うには少し抵抗がある表現だけど、それでも、初めて会った時から思っていた。

その凄く綺麗な顔立ちに、分かっていても魅せられる。


閉じられたせいで出来た睫毛の影。月の光りに照らされた白い肌。

本当に息をしているのかと心配になったけれど、小さく上下している胸の動きに安堵する。



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