-Judge-
佇む私の横を通り過ぎ、キッチンに向かう彼を振り返る。
やはり、この匂いだ。
「ベッドまで運んでくれたんだろ?」
寝ている時に嗅いだ石鹸の香りが、西園寺からした。
「ああ。」
「ありがとう。」
「ああ。」
「あと、昼のことだけど。こいつが生徒会長なのか。って、言い方は悪かった。ごめん。」
「ああ。」
「ああしか言わないな。」
「気にしてない。」
「え?」
「別に気にしてない。こっちも気が立ってた。わりぃ。」
冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、そのまま口をつけて飲む西園寺に、ああ、うん。と返事をする。
すると彼は何も言わずにリビングを出て行った。
まさか謝られるとは思っていなかったから、私もそれ以上何も言えずにその後ろ姿を黙って見送った。
なんか、特に格好良いことはしていないのに。
素直に謝るその潔さが意外過ぎて格好良いと思ってしまった。