ラブトラップ
他のメンバーが気負いもなくステージに向かっていく後姿を見ながら、私は緊張で冷えた手を思い切り握り締める。
折角の初ライブなんだもん。

落ちつかなきゃ――。


煩く鳴り響く心臓の音を無視しながら、震える足でステージに出る一歩手前。

くしゃり、と。
私の頭を後ろから撫でる手に、思わず脚を止めた。

真後ろに感じるのは、良く知っている、口の悪い男の気配。
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