ラブトラップ
ステージに上がってみれば、客は本当に数十人だけ。しかもほとんどが顔見知り――。

つまり、私たちのクラスメイトか、あるいは他のメンバーのクラスメイト。

――まぁ、楽しめばいっか。

それまでの緊張が嘘のようにすとんと落ちていく。

健二がスティックを握ってカウントを始める。
始まりのシンバルの音が軽快に鳴ったときにはもう、私の緊張はおさまり、ただ、音楽を楽しむことだけに集中し始めていた。


私たちの演奏曲は3曲。
一バンドの持ち時間が15分なので、妥当な数だ。


でも――
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