ラブトラップ
「アイツは――。
 ダメって言っても聞かないんだもん。
 むしろ率先して名前を呼んでくるから諦めた。いつも口悪いし、意地悪だし――」

「でも、好き。
 なんでしょ?」

私の口から零れはじめた罵詈雑言を、南がたった一言で止めてしまった。

「――やっぱ違うって。
 気の迷い。
 ほら、初ライブのドキドキと恋のドキドキを勘違いしちゃったに違いないわ。
 うん、そういうことにする」

ゆっくりと自分に言い聞かせていたら、なんだかそんな気がしてきた。
< 32 / 90 >

この作品をシェア

pagetop