ラブトラップ
4.
――別に、私は稲葉美虎のことなんて、何も思って無いもん――

そう思えば思うほど、何故か私の目は美虎を追ってしまう。
何度も繰り返された席替えで、もちろんもう、私の席の隣が美虎ってことはない。

今は、一番後ろに座る私の、3つ前の斜め左が美虎の席だ。

綺麗な髪だな、と思う自分にびっくりしたのが、南とパフェを食べた翌日のこと。
横顔を盗み見て、高い鼻梁に見蕩れてしまう。
誰かと雑談しているときの、どうってことない声を艶やかだと思ってしまう。


何よりも――
気付けば、美虎の姿を自分の目が追っているっていう状況が、私にとってはもうありえないことのように思えて――

気付けば視線を逸らすように、努力はしているんだけど。
何故だか、自分の思ったように身体は全然動かない。
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