ラブトラップ
そんな風に過ごし始めて五日が過ぎたとき。

「ねぇ、聞いた?
 早川さんが、稲葉に告白したんだって」

学校帰りに南が、のんびりした口調でそう切り出した。


「――え?」

自分があげた声が、思いのほか大きくて、私は慌てて口を押さえる。


瞬間、それまで心地良く吹いていた秋風さえも、ぴたりと止まった。それどころか、心臓の音さえ止まってしまったような気がする。

「嘘、でしょう?」

「嘘かどうかは定かじゃないわよ。
 直接見たわけじゃないもん」
< 36 / 90 >

この作品をシェア

pagetop