ラブトラップ
早川さん――。
突然出てきたクラスで一番の美人の名前に、私は狼狽を隠せない。

「ちょっと――。
 南、どうしようっ」

「どうしようって言われても」

南は呆れ気味に肩を竦める。

「アンタ、別に稲葉のことどうも思ってないんでしょ?」

「う――っ」

私は言葉を失う。
本当のことなんて、分かってるくせに――

「南の意地悪っ」

ぐすん、と、半泣きになる私の肩を、ぽんぽんと南が叩く。
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