ラブトラップ
「え?
 美虎の実家って喫茶店だったんだ?」

そんなこと、ちっとも知らなかった。
健二は私を人の少ないほうに引っ張ってから、話を続ける。

「別段、手伝う必要はないんだろうけど。
 母子家庭で、一人っ子だから気になるんじゃない?
 でも、珍しいね。
 キリンが美虎のこと気にするなんて」

「そういうわけじゃないけど、別に」

私は慌てて言葉を重ねる。

それをどう受け取ったのか、健二は爽やかに手をひらりと振ると、先に歩いていった。


――ま、でも。
  偶然とは言え、ここまで情報をゲット出来たんだから、初日にしては上々じゃないかしら。
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