ラブトラップ
もちろん、一番にスタジオに入って練習していたのは陽介。

「こんにちは」

扉を開けた途端、陽介が演奏を止めたのでぺこりと頭を下げる。

ああ、キリンちゃん、と。
陽介は相好を崩した。

「今日は早いね」

「少しは練習しなきゃと思って」

私の言葉に、陽介は人の良い笑みを崩さない。
陽介だって客観的に見て十分かっこいい部類に入る顔してるのに――。


私の心臓は、微塵もときめく様子がなかった。
つまり、今までと同じように普通に喋れるってこと。
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