ラブトラップ
陽介はギターを置いて、キーボードの配線をしている私のところにやってきた。

「じゃあ、弾いてみてよ。
 どれだけ耳コピ出来たか、診断してあげる」

「それは恥ずかしいよ。
 全然、ダメダメだもん。
 陽介に聞かせることが出来るレベルじゃないって――」

困る私に、陽介は楽しそうに笑う。
からかっているに違いない。

「ほらほら、モノは試し。
 ギター入れようか?」

「そ、そんなもったいないこと出来ないって」

「もったいないなんて。
 ライブの前にはそんな感じ見せなかったのに。圧倒されちゃった?
 俺たち、本番に強いタイプでさ」

確かに、と。
私は陽介の人の良い笑顔に釣られて少しだけ口許を崩す。

「――うん。
 それは認める。スタジオで練習しているときよりずっと、皆かっこよかったもんね――」
< 66 / 90 >

この作品をシェア

pagetop