ラブトラップ
美虎を意識しだしてからの、私は確かにおかしい。

南相手に「美虎」ということが増えた一方で、本人相手には「美虎」と簡単に呼べなくなっている。

――こんなんじゃ、友達のままで居れたときの方がよっぽど良かったな――

私はため息をかみ殺して、キーボードを片付けていた。


片付け終わった私に、陽介が声を掛けて来る。

「キリン、これが例のスコアね」

「ありがとう、陽介」

他のメンバーの名前は、困らず言えるのに。
陽介は、私にスコアを渡した後も目の前に立っているので、思わず首をかしげた。


「で、さ。
 新曲のスコア、美虎忘れていったみたいだから、届けてきてあげれば?」

「――えええっ?」

私は思わず必要以上に声をあげてしまって――。
慌てて唇を押さえた。
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