ラブトラップ
「――は?」

思わず首を傾げるベースの宏(ひろし)を制止したのが、ドラムの健二だった。

「それがいい。
 俺が連れてってやるよ。
 この前言ってた喫茶店。丁度帰り道だし」

「――えええ?」

「じゃあ、頑張って」

ぽん、と、陽介が私の背中を押す。


「ななななな、なんでよ。
 通り道なら健二が持っていけばいいじゃんっ」

目を丸くする私に、宏も納得しかねる様子で同意してくれた。

「本当、なんでだよ。
 だいたい、美虎はボーカルなんだから別にスコアなんて必要ねーじゃん……」

そう言う宏の鳩尾に、陽介が見事な肘打ちを決める。

ぐはぁ、と、のたうちまわる宏を尻目に健二が私の手を掴んで走り出した。
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