ラブトラップ
10.
そうやって、なんとなく曖昧なまま付き合い始めたような気がしなくもない、あの秋の日から一ヶ月が過ぎた。
「ねぇ、あんたら本当に付き合ってんの?」
ある日の昼休み、南に引っ張られて私はもうだいぶ風が冷たくなった屋上でランチを取っていた。
もちろん、コートまで着込むという重装備で、だ。
「多分……。
なんで?」
「相変わらずなんだもん。
元に戻ったようにしか見えないわ」
南の言うことももっともで、あの日から私と美虎は、また、以前のように何かと言ったらかしましく言葉を交わせるような仲に戻っていた。
傍から見たら、『元の仲の良い友達に戻った』程度にしか見えないかもしれないし――。
実際、うちのバンドのベーシスト、宏は、私と美虎が付き合ってるなんて夢にも思ってないはずだ。
「それが美虎なんだもん、仕方ないじゃん。
南は相変わらず斉藤くんとラブラブなんでしょ?」
「まぁね」
えへ、と笑う南の笑顔は愛らしく、これぞ恋する女の子って感じで……。
私は今でも多分、こんな笑顔は作れない。
少なくとも、普段の美虎の前では。
「ねぇ、あんたら本当に付き合ってんの?」
ある日の昼休み、南に引っ張られて私はもうだいぶ風が冷たくなった屋上でランチを取っていた。
もちろん、コートまで着込むという重装備で、だ。
「多分……。
なんで?」
「相変わらずなんだもん。
元に戻ったようにしか見えないわ」
南の言うことももっともで、あの日から私と美虎は、また、以前のように何かと言ったらかしましく言葉を交わせるような仲に戻っていた。
傍から見たら、『元の仲の良い友達に戻った』程度にしか見えないかもしれないし――。
実際、うちのバンドのベーシスト、宏は、私と美虎が付き合ってるなんて夢にも思ってないはずだ。
「それが美虎なんだもん、仕方ないじゃん。
南は相変わらず斉藤くんとラブラブなんでしょ?」
「まぁね」
えへ、と笑う南の笑顔は愛らしく、これぞ恋する女の子って感じで……。
私は今でも多分、こんな笑顔は作れない。
少なくとも、普段の美虎の前では。