最後の約束
だからこそ今足掻かなくては、と鉄之助の本能が叫びだす。
途中、流山付近で姿を消した兄のようにはなりたくない。
この人を、裏切ったりはしたくない。
そして何より、今何も言わずして後悔を蝦夷に残すなどあってはならないのだから。
「嫌です。覚悟は出来ております故、他の者に頼んでください」
鉄之助がなけなしの勇気を振り絞りそう言うと、一瞬黙り込んだ土方だったが一呼吸置いたあとすっと横に置いてあった日本刀に手を伸ばした。
そして、一気にその刃を抜く。
カシャン…
床に転がる鞘。
引き抜かれた銀色の刄は寸分も狂うことなく鉄之助の首に突き付けられた。