最後の約束
声が枯れそうになろうと構うことなく土方の名を呼び続ける鉄之助。
途切れることのない涙は降り続ける雨のように鉄之助の頬を濡らしていく。
彦五郎はそんな鉄之助の手を取り家の中へ招き入れると、優しく鉄之助が泣き止むのを見守ってくれた。
乱れた呼吸が落ち着いた頃には、すっかり辺りも暗く染まっていて。
鉄之助はぐっと手の甲で涙を拭うと、姿勢を正しこれまでの経緯を話し始めた。
蝦夷までの道、遠い北の地での生活。
そして最後に自身が託された思い。
所々言葉に詰まりながらも必死に語っていく鉄之助に佐藤家の人々も皆が笑みを浮かべて頷いた。
佐藤家ではその後二年に渡り、鉄之助を家に住まわせたという。