駆け引き×スクープ2~雪月鬼~
「………」
栗塚は、何も言わなかった。
それが月詠にはありがたった。
何も言わず、
栗塚は月詠を自分の胸へ引き寄せた。
月詠も、抵抗はしなかった。
月詠の後頭部を優しく撫でて、栗塚は言った。
「…君の好きなように生きればいい。それがどんな答えでも、俺は何も言わないよ。君の人生なんだ。君の生き方に俺は口出ししない……」
栗塚さんの、
あまり抑揚のない声は、すんなりと私の胸に落ちて、
「…はぃ………」
思わず、そう言ってしまった。
噛みしめていた唇を離し、息を吐く。
すると、
目から雫が落ちた。
ぴんと張り詰めていた糸が切れ、感情が溢れ出す。
ずっと、
自分の人生に纏わりつく“夏梨名”の文字、
今も、
この名は嫌い。
だけど少しだけ、
この名に感謝した。
この名がなければ、
この人に会えなかった。
しぃや神田、桐谷君
遥に凜に鈴
たくさんの中で、本当に大事な、大切な人達を知ることが出来た。
それはきっと、
この名のおかげ、
そして気づかせてくれたのは、
栗塚さん、貴方ー‥